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パラレル

サヨナラの小部屋

 ←きみを、きく よ⑭ →Always Love
(閲覧注意、かもしれません、、)





親父は随分あっさりと死んだ。

真面目と、お堅い職業だけが取り柄の男らしく
午後5時の終業ベルと同時に心臓を弾けさせて あっけなく逝った。



突然だとか執り行いの多さとか あまり関係無く泣く気は起こらなかった。
むしろ
長年の同僚という人が
「最後に、弟さんの名前を呼ばれたようですよ。」
と、教えてくれたことを
あの仕事人間も最後の一瞬でも家族を顧みたのだ、と軽く笑えたくらいだ。

そういう親子関係だった。





「ジョンウン兄さん、やっぱりあの人 来なかったね。」


葬儀の合間、弟のジョンヒョンが呟いた。

突然俺たちの前から姿を消した
今はどこで 何をしているかも分からない
一時期兄だった奴のことを

弟は今でも、家族として慕っているようだった。

相手はきっと、親父が死んだことも知らないんだろう。



「やっぱりあの女が幸せを全部持って行ったんだわねえ。」

葬儀を終えて、はるばるやって来てくれた付き合いの薄い親戚たちに挨拶をした時
親父の従姉妹だか が漏らして
ジョンヒョンがはっきりと顔をしかめたのを肘で小突いて引っ込めてやった。



父は突然 子連れの女性と再婚をした。
仕事一辺倒で愛想も無い親父がよくもまあ、と思いきり面食らったが

まったくあの男の何に釣られてやって来たのか
よく笑い、体の大部分が優しさで出来たような義母に
それまで母というものを知らなかった弟はすぐに懐いて
父にすっかり呆れていた俺も久々に親らしい存在を感じて安心していた。

彼女の連れてきた子供は
おとなしく、女の子みたいに恥ずかしがりだった。
弟であることを当然としてきたジョンヒョンも
兄でいることに慣れていた俺も
抵抗は無く真ん中に受け入れ

母ひとり自分ひとりに慣れてきたあいつだけ
遠慮めいた表情を ごくたまに見せることがあった。


それでも 俺たちは良い家族だった。
勤勉な(と言えなくもない)父、優しい母、思慮深い弟、やんちゃな末っ子というのを
少なくとも俺は気に入っていた。


何年も経ったある日
義母が家を出るまでは。


朝、俺たちを送り出した笑顔は
夕、俺たちの誰をも迎えなかった。


再び見た顔は 数日後、
病院の治療台で、血液とガーゼと呼吸器に覆われて
痛みに歪んでいた。
駆けつけた俺たちに気づいているのかも曖昧で

親父が一度 呼びかけると
心電図を大きく ビクリと揺らして
そのまま静かになってしまった。



そのすぐ後に
彼女の息子は家を出た。

「ここには家族がいないので。」

そう、水臭い言葉を捨て台詞に。
高校卒業間際のある日、それ以来会ってはいない。


だからと言ってそれからの俺たちに変わりは無く、
元通りの形に戻って


親父は前にも増して、仕事に没頭しただけだった。



「幸せを全部…」云々は当時末っ子が自分を責めて繰り返した言葉だ。


というのを、
何年振りかに再会した 次会うのは何年後か、もう会わないかも知れない親戚に説明することもない。


遠い親戚よりも
近くに篭もる父よりも

血の繋がらない母と兄弟

という時代があった、というだけの話だ。




ころり、と掌に落ちた。

慌ただしさが去って、俺の中にわずかにあった息子としての情がやっと顔を出し
『遺品』整理、というやつに手を着けた時だった。

その小さな鍵を見たのは初めてだったけれど、
何を開ける鍵かはすぐに分かった。




かちり、
その扉は当たり前にそれを受け入れた。


家族が増えて、この家を新築する際に
父が寝室とは別に設けることに酷く拘った部屋だ。

書斎と称したその部屋には、家の誰も入れることを許さなかった。


きっと仕事の資料だの趣味の研究文献が嫌ほど詰まっているんだろう と、
これからの大作業を思ってうんざりとドアを開けた、、、



「何、だ…コレ。」


大方の予想通り一つの壁を埋めた本棚には書籍やファイルがぎっしりと持ち主の性格を表したように整えられていて
収まりきらないものも傍らに真っ直ぐと積み上げられていた。


俺の心臓を冷たくさせたのは
あまりにあの人らしいそれらではなく


他の壁に隙間なく貼られた

写真、写真、写真、、


写っているのは全て同じ人物で

そのほとんどが、

カメラの存在を知らないであろう
無邪気な笑顔を浮かべた少年の


学校での
部活での
出掛け先での

友人との
大人たちとの

ひとりでの


かつて 俺の弟だったことのある あいつの姿



どう、いう…



思わず後退ると
がたり、不安定なものにぶつかった。
白い、頭の無い人の形をした、、


う、わ


飛び退けば小中大と並んだトルソーが揺れて、
そいつらが着ていたのは
サイズが合わなくなって とっくに手放した筈の あいつの幼い体によく似合っていた一揃いと
中学、高校の制服だった。


あの制服のネクタイ、

いつか 失くしてしまった、と残念そうに言っていたのを
俺が同じ男子校に進学した友人から譲ってもらったものだ。

まるでプレゼントかのように
派手に喜ぶのに、得意になったのだから覚えている。



この時俺は既に 失くなってしまった方のネクタイも
この部屋にあると確信していた。


必ずどこか違うところを見ている義弟が
壁から天井から大勢、俺の家捜しを見張っていた。


次第に気付いたことに
本棚に詰められた書籍は
教育情報誌、思春期の子を持つ親への指南書、中高生が好むような漫画やファッション誌
かつて流行ったジュブナイル小説、

けれど俺たちの為でないと分かりきっているのは


以前に俺もあいつから薦められたことのある映画や、好きだと言っていた作家のシリーズが並んでいたこと

早々と音楽を進路に決めた俺たちには縁のない

私立中学の願書
実際に進んだ高校と同等ランクの学校のパンフレット
必要の失くなってしまった 有名大学の過去問題集



趣味を研究、と言うだけあって
さすがの収集量だ。



開かずの部屋の中身は、かつて息子だった あいつを巡った、親父の頭の中だった。






「…ヒョン、ジョンウン兄さん。そこにいるの。」

遠くなった耳に弟の呼びかけが聞こえる。
最初は、ヒョンといえば間違いなく俺のことだったのに
区別するために名前を先につける癖は今も続くんだな、とぼんやり思った。

「あれ、開くんだそこ。めずら…」

入っちゃいけない

同時に引き出して欲しい、という気持ちがその声を止めた。


「…何だ、コレ、」

さすが弟、ジョンヒョンはまったく同じ声をして 立ち尽くした。


「な、何何何何、何なのこれ。」
「ジョンヒョナ、」
「義兄さんがいっぱい。なんでこれ。何なの、、なんでこんなに、」
「、るさい、黙れって!!」

一瞬、ぐっ と黙った弟は
それでも理解出来ずに
なんで、おかしくない?
と繰り返していた。
それが正解で、結論だと言うのに。


ジョンヒョンは気づいてもなお、ぐるぐると部屋中に目を遣って写真と目を合わそうとしている。

そのどれも 睫毛の一本一本がくるりと跳ね、桃色の唇と両頬は幸せそうに光っていた。
なあ、俺たちは一体いくら撮ってもらったことがあったっけ。
この壁の何分の一なら敵うんだろう。決して羨みもしないが。


どうして
最初に会った時より幼いあいつが 引き伸ばされて、笑っているんだ。


いつから、


恐怖より呆気に取られていると、





「ヒョン、あれって、、」

震えた指が差した机の上の写真立てには
一番新しい家族写真と、一番古い

遥か若い義母さんが 膨らんだお腹に手をやって 当時の夫らしい人物に寄り添って
幸せに微笑んでいた。


義母はこれを見たのだ。
だから
呆れたか、
怖れたか、
絶望して 家を飛び出したのだ。

子供のことを一番に思う人だったのに
それさえ置いて行かなくてはいけないほどに。


それなのに
たった数日後
折角抜け出した家のほんのすぐ近くで 車にぶつからなきゃならないなんて。


ポケットには、電車の切符が4枚。





写真立ての前には分厚い日記だ。
ハードカバーの随分と上質な一冊で

新しい家族の始まりの日から綴られていた。


『○月◆日
遂にこの日がやって来た。私たちはこれで晴れて家族だ。「よろしくお願いします」と俯き気味に挨拶する君に、これからは君を幸せにする事を第一に考えようと決めた。』

『○月△日
ぎくしゃくとした時間流れる。
あまり目を見て話さない。君は笑った顔が良いというのに。彼女の笑顔の中に、君のそれを探る。』

『■月◎日
初めて、父さんと呼ばれる。こんなに嬉しいことは無い。照れる私に家族皆が笑った。』


『◇月▼日
帰宅時に出迎え無く寂しい。部屋で泣いているではないか。
聞けば学校で連れ子だと虐められたようだ。一体どうなっている。憤慨するも宥められる。これだから母親は。
虐めた奴らの名前だけでも知れたら、、、』

『▲月▽日
女友達と連れ立って歩いていた。道理で最近勉強に身が入っていない様子だ。
あんな下品な連中に引き込まれる訳にはいかない。私があの子を守らねば。』

「…ヒョン、知ってた?」
「うん?」

「義兄さんを虐めた奴らとか、酷く当たる教師がね、転校したり辞めちゃったりすることがあったの。俺そうなって当然の奴らだったのかなって思っていたけど、」
「そう、思っとけ…」


普段無口な親父は
日記の中では饒舌で、女子中学生のように感情的だった。

すべて義弟について言葉を躍らせていて
妻はたまに登場するだけ、

俺たちはほとんど書かれることは無かった。



日記は、あいつが出て行った前の日付で途絶えていた。






『ここには、家族がいないので。』

母親から、継父の感情について聞かされたのだろうか。
自分でこの部屋に気付いてしまったかも知れない。
どうして母が死んでいったか、知っているだろうか。

『僕は、いてはいけない。』

今思えば、血ではない他の事を言って
逃げ出したあいつを

親父は得意の地道さと執着心で
追うことをしなかったようだ。

ただ
決して自分を見ることのない笑顔に囲まれて
その扉に鍵を掛けた。








どういうつもりで あの子に想いをやっていたのかは結局分からないまま。


「でも、傷付けるような真似はしなかったみたいだ。」


ページを行ったり来たりして、ジョンヒョンは言った。



玩具店やスポーツ用品店の野暮ったいギフト包装が 渡されないまま色褪せている。


『◯◯高校 校風・評価及び教職員・生徒の素行調査書』というダサいタイトルの手作りのファイル
全寮制や遠方の学校を徹底的に反対した訳だ。


見守る使命感と充足感に心躍らせて
いかに彼が自分にとって素晴らしいか綴り

どう素晴らしくあるのがふさわしいのか探り


そのくせ
声をかけることも触れることも無く思いを馳せて、

近くに置こうと努めた。
全てを知ろうと尽力した。




これって、
過保護と呼ぶには歪んでいて
邪恋と呼ぶには真面目過ぎる

どちらにせよ



「異常、だ。」


バサリと落ちた日記帳の、
一番後ろのページには震える文字で あいつの名前。


死に際に呼んだのはこの名前に違いない。








「なあ、ジョンヒョナ お前 あいつに会いたいと思うか。」

「…前は死ぬほど思っていたけど。

今は 軽くなって、笑ってくれていたら、それでいい。」









  
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~ Comment ~

あぁ……

奥の奥まで読み込めなくて……

お腹が大きい奥さんの写真……?

う~ん……

でも相変わらずスゴイです!

NoTitle

ともさん、


おっとぉ~
わたしのお話に奥行きがあったことなんてありましたっけ??
特に深い意味のない、気持ちの悪い話でございます。

ちょっとこれはしつこく書き直し続けると思います~(^_^;)
ほんとね、自分が面白いと思うものが周りにとって必ずしもそうではない、ってことです。
完ぺき自己満ミアネヨ~

おお!改稿されてる!

九割わかりました!


真ん中の子は、間違いなく違う男性との間の子供ですよね?


何かでみかけて、惹かれたんでしょうかねぇ……


すっごい、わかりやすくなってます!

さすが、すももさん(^^)

Re:

ともさん、ありがとうございます(^-^)


この話 もっと気持ち悪くしたい(^_^;)フフフ...

肝心の子の名前を明かさなきゃいけないんですけどね、本当は。
かわいそう過ぎるのと、何より「ボー然とするジョンウン」を書きたかったが為のお話なのです。


まーぁ、ワタシのお話で餌食になるっていったら 知れてますから、、、



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